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週刊トラベルジャーナルで「新日本ツーリスト」が紹介されました。(週刊トラベルジャーナル)

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- 2016年2月1日 週刊トラベルジャーナルより -

新日本ツーリストの人材育成術

5年で集客10倍、未経験の新人を戦力に

香川県高松市の新日本ツーリストが11年に立ち上げた日帰りバスツアーが急成長している。
その原動力となったのか当時の新人社員たちだ。未経験者を強力な戦力に育てることができた秘密とは。
取材・文/高岸洋行

新日本ツーリストは社員数21人の地場の旅行会社だ。グループ企業には、バスとタクシー事業を行う琴平バスと、四国巡礼に特化したランドオペレーターの四国巡拝センターの2社があり、コトバスグループを構成している。グループはこれまでバス会社としての下請け業務や、旅行会社としての高速ツアーバスやスキーツアーの企画・実施を主として収益を確保してきた。しかし、少子高齢化の時代を迎え、高速ツアーバスやスキーツアーは将来性に不安があり、下請け仕事では収益向上や事業展開の拡大は難しい。

そこで、07年に新日本ツーリストの代表取締役に29歳で就任した楠木泰二朗氏が新たな収益事業に育てようと11年に立ち上げたのが、日帰りバスツアーの「コトバスツアー」だった。

しかし、周囲は反対。既存のバスツアーがそれぞれのポジションで市場を分け合っているなかで、いまさら新規参入して本当に勝算はあるのかと疑問が向けられた。そんな周囲の反対を押し切って新事業に踏み切った楠木代表が目を付けたのが、新入社員たちのやる気と柔軟な思考力だった。

結果的に、コトバスツアーの参加者は11年のツアー開始から5年で約10倍に増え、15年の集客人数は2万6000人に達した。

新人の企画発想力に賭ける

コトバスツアーのために楠木代表が選抜した立ち上げメンバーは、10年と11年入社の新人たちだ。メンバーのひとりで11年入社の企画営業部(コトバスツアー担当)の近江明帆さんは、「代表から『一緒にやろう』と声をかけていただいたときは、業界のことも全く知らない不安より、新しいことを立ち上げられるわくわく感のほうが勝りました」と当時の心境を振り返る。メンバーはほかに、近江さんの同期1人と10年入社の2人、楠木代表を含む取締役2人の合計6人。ここから全く新発想の日帰りバスツアーが生まれた。

企画のズブの素人だった新人たちが企画したのは、ちょっと変わったニッチなツアーばかり。たとえば近江さんは、京都の大学で学んだ経験を活かし、京都大学内を現役の京大生か案内するキャンパス巡りと、知恩寺の手作り市での買い物を組み合わせたツアーだった。他の企画も既存のツアーにないといえば聞こえはいいが、果たして売れるかどうか不安なものばかり。しかし、近江さんの第1弾ツアーには25人が集まった。内実は「両親や親戚にも参加を呼び掛けた」という必死の集客努力もあってのことだが、それでもツアー参加者のなかには、いまではコトバスツアーの固定客となった顧客もいるという。主な客層は「他のバスツアーに行き尽くした人や、珍しいもの好きな人たち」(近江さん)だった。

だが、それだけでは現在の2万6000人までは顧客を広げることはできない。コトバスツアーが地元でも評判になり、徐々に評価を上げていった理由の一つは、新人たちの発想による斬新なアイデアの数々があった。5年間に考案され、現在のコトバスツアーの「7つの品質宣言」にも掲げられているアイデアが、「旅のしおり」。出発前に参加者へ渡される行程表の一種だが、一般的な行程表とは異なり、プランナー自らが自分の言葉で企画に込めた思いや見どころ情報を綴り、まとめたもの。しおり作りには、かなりの手間と労力が必要となる。

企画したツアーの添乗も行うコトバスツアーのプランナーは、「旅のしおり」以外にも、実に手間のかかる作業を数多くやらねばならない。参加客一人ひとりに配布する「ツアーネーム」は、ツアーバッジの代わりに首から下げるネームだが、手書きメッセージが書き込んである。内容はリピーターであれば前回のツアーの内容に触れるなど個別の内容。またツアー終了後には、手書きのメッセージとツアー時にプランナーが撮影した写真1枚を添えた「お礼状」も郵送する。参加者が40人ならば、これだけの作業を40人分こなすわけだ。さらに「お礼状」は、ツアー参加客だけでなく、サービスを提供してくれた取引先へも送付している。徹底したパーソナルサービスはコトバスツアーの大きな魅力として知られるようになっている。楠木代 表はこの点について、「1対40人のコミュニケーションではお客さまとの距離を縮められないが、コトバスツアーでは1対1の関係を40人分積み上げることを意識したコミュニケーションを図っている」と説明する。

決めつけをなくす

次々とツアー企画を考案し、ツアーに添乗し、「旅のしおり」作成をはじめとした手間のかかる作業をこなすのは、かなりの重労働である。素人同然だつた新人を、こうした重労働を立派にこなす戦力へと育て上げるのは容易ではないはずだ。そのため、新日本ツーリストは人材育成にはかなりのコストを割いている。

たとえば研修制度では、若手社員が自分ではなかなか経験できない上質なサービス体験をさせるため、ザ・リッツ・カールトン東京を使った宿泊研修や、東京・青山のレストラン「カシータ」で食事をするといった研修を実施している。これは「本当にインパクトのある体験をしないと、その体験は心には残らない」という楠木代表の持論に基づく取り組みだ。

また、「添乗員おもてなし研修」として、社員を参加客に見立て、実際にバスを使って添乗技量の確認、向上のための研修を年に2回実施している。社員同士のチェックは厳しく、参加者は客前よりも緊張するほどという。

柔軟な発想と若い力が存分に発揮できる環境整備も重要だ。楠木代表は、「企画会議では、これをしなければならない、これはしてはダメというルールは極力なくしている。経験のある者から見て不安を感じる新人の企画もあるが、まずはやらせてみる。そもそも集客できなかったら失敗という決めつけはしない」という。ただ星空を観賞するだけのツアーを企画した新人がいたが、経験者にはない発想、他にない企画として価値を認めてゴーサインを出した。「こちらが不安に思うような企画が意外と集客することも多い」(同)のだとか。

自主性を最優先するのも特徴だ。近江さんは、すでに企画、添乗をこなすプランナーとして大きな戦力となっているが、「バスの運転もできれば、全部一人でできる」と思い立ち、2種免許の取得を会社に願い出て認められた。昨年、晴れて中型2種免許を取得。自分で企画し、運転とガイド役を務めるツアーの実現を目指している。

賞与査定時の参考情報としている。

社員のモチベーションを引き出す評価システムも独特だ。年2回の賞与前には社員同士が仕事を相互評価し、「あの人を評価してもらいたいアンケート」を楠木代表に提出し、賞与の参考資料にしている。マイナス面を指摘するのではなく、褒め合える内容を取り上げる仕組みで、「数字に表れない、たとえば『雰囲気作りがうまい』など、近くで接する同僚だからこそわかる長所を挙げてもらうのが狙い」(楠木代表)だという。

社員が賛同できる旗を掲げているのもモチベーション向上につながっている。コトバスグループは、「四国を代表する企業へ成長する!」をグループミッションに掲げ、実際にコトバスツアーによって企業評価を着々と高めている。ツアー立ち上げ時から関わる近江さんも、「お客さまから評価されるようにはなってきたが、まだまだ成功してはいない。四国一の企業になるには、ツアー本数も足りないし、ライバルは多い」と意欲満々だ。地域にとってなくてはならない存在となり、「着地型旅行で地域貢献する」という将来ビジョンも、IターンやUターン組も多い社員のやる気を掻き立てているようだ。

人材育成の出発点となる採用活動に関しても、ユニークな取り組みを行っている。採用面接を社員が行うのだ。「同僚にふさわしい人材を社員に選んでもらう。一緒に働くのは社員であり、彼らが選ぶほうが理に適っている。また採用に関わったことで新人育成に対する責任感も生まれる」(楠木代表)というのが理由だ。一次面接を社員が行い、最終面接は役員が行うが、基本的に社員が行った面接結果が尊重される。役員面接は、採用人数に限りがある場合の人数調整が主な役割だ。

新人の柔軟な発想の芽を摘まず、社員の自主性を尊重し、全員が共感できるビジョンを掲げて、目標達成へ邁進する。それがコトバスグループの強みのようだ。

●人材育成の主な特徴

POINT1 上質なサービス体験
心に残る上質なサービスを体得させるため、自身では行く機会のない高級ホテルやレストランで社員研修を実施。

POINT2 発想と自主性を尊重
不安があっでも新人の企画を採用。思わぬ集客につながるケ-スがあり、意欲向上と柔軟な発想力の引き出しに。

POINT3 社員の相互評価システム
日々近くで接しているからこそわかる長所を社員が相互に評価。

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